デジタル化が進む現代社会では、ホームページやECサイト、アプリなど様々な形態で提供されるWebサービスが増えました。
そこで重要になるのが、Webサイトやアプリの成功を左右する「ユーザビリティ」です。
この記事では、ユーザビリティの定義や重要性、評価方法、改善策についてわかりやすく解説します。
ユーザビリティの定義
ユーザビリティとは「ユーザーにとっての使いやすさ」を意味する言葉で、製品やシステム等におけるユーザー満足度の度合いを表します。
- ISO(国際標準化機構)
- JIS Z 8521:2020(日本産業企画)
- ヤコブ・ニールセン
によって定義が定められており、それぞれに含まれる要素を知ることで「ユーザビリティとは何なのか」を深く理解できるでしょう。
ここでは、それぞれが示すユーザビリティの定義を紹介します。
ISO(国際標準化機構)9241-11の定義
ISO(国際標準化機構)9241-11の定義では、以下の3つの要素が定義されています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 有効性 | ユーザーが目的を正確に達成できるか |
| 効率性 | ユーザーが目的を達成するためにかかる労力の少なさ |
| 満足度 | 製品・サービスに対するユーザーの快適さ |
JIS Z 8521:2020(日本産業企画)の定義
ISOを一部調節したJIS Z 8521:2020(日本産業企画)では、以下のように定義されています。
特定のユーザが特定の利用状況においてシステム、製品又はサービスを利用する際に、効果、効率及び満足を伴って特定の目標を達成する度合い。
ヤコブ・ニールセンによる定義
アメリカの工学博士ヤコブ・ニールセンが1993年に提唱した「ユーザビリティの5つの品質要素」は、以下の通りです。
これは、Webサイトやアプリなどの使いやすさを評価するための実務的な指標として活用されています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 学習用異性 | 初めて訪れたユーザーが、システムやサイトを簡単に利用できるか |
| 効率性 | ユーザーがどれだけ効率よく目標を達成できるか |
| 記憶容易性 | 長期間使用していなかったユーザーが、再度利用する際に操作を思い出しやすいか |
| エラー発生率・回避性 | ユーザーがどれだけミスを起こしにくいか。 またミスが発生した場合に簡単に回復できるか |
| 満足度 | 使用体験に対するユーザーの満足感や快適さ |
ユーザビリティはなぜ重要なのか?
「ユーザビリティが重要といわれるのはなぜ?」と疑問に思っている方も多いでしょう。
その答えは、ユーザビリティがWebサイトや製品・サービスの成果に直結する要素だからです。
例えば、ボタンの位置がわかりにくかったり、ページの読み込みが遅かったりすると、ユーザーはストレスを感じて離脱してしまいます。
この場合、どんなにWebサイトの内容が良くても、商品購入などの成果にはつながりにくいでしょう。
だからこそ、ユーザビリティを意識して「快適に使えるサイト」を作ることが重要なのです。
見やすく操作がしやすいWebサイトなら、ユーザーの満足度が高まり
- コンバージョン率の向上
- リピート率の向上
- ブランドイメージの強化
などの成果を得やすくなります。
ユーザビリティとUX・UI・アクセシビリティの違い
以下の3つはユーザービリティと混同されやすい言葉ですが、それぞれ意味が異なります。
- UX(ユーザーエクスペリエンス)
- UI(ユーザーインターフェース)
- アクセシビリティ
それぞれの意味と、ユーザビリティとの違いを把握しておきましょう。
ユーザビリティとUXの違い
UX(ユーザーエクスペリエンス)は、ユーザーが製品やサービスを通じて得る「体験」を指す言葉です。
「製品・サービスが使いやすいか」ということだけでなく、
- 使っていて楽しい
- 心地よい
- また使いたい
と感じられるかどうかといった、ユーザーの感情面を含めた印象を意味します。
ユーザビリティ(使いやすさ)は、UXを構成する要素の1つとして考えます。
ポイント
・ユーザビリティ=UXを支える土台
・UX=体験全体を評価する広い概念
と捉えるとよいでしょう。
ユーザビリティとUIの違い
UI(ユーザーインターフェース)は、製品・サービスとユーザとの接点そのものを意味する言葉です。
対して、ユーザビリティは「Webサイトの使い勝手はどうか?」(ボタンが押しやすいか・フォントの大きさはちょうどいいか)という視点です。
UIはWebサイトの構成要素、ユーザビリティはその使い勝手のよさを測る基準と理解するとわかりやすいでしょう。
ユーザビリティとアクセシビリティの違い
アクセシビリティは「アクセスのしやすさ」を意味し、障がいの有無や年齢、利用環境にかかわらず、誰もがWebサイトやアプリを利用できる状態を表します。
ユーザビリティとの違いは、特定のユーザーだけでなく、より多くの人に快適に利用してもらうことを意識する点です。
ユーザー層が限定されるサービスにはユーザビリティを、幅広いユーザーが対象となるサービスならアクセシビリティを意識した設計が重要になります。
ユーザビリティの評価方法
ユーザビリティを向上させるためには、製品・サービスのターゲットを明確にして設計した上で、
- 本当にそれが使いやすいのか
- 対象とするユーザーが望む目的を達成できるのか
といった点を評価(検証)する必要があります。
しかし「制作サイドが単に作りたいものを作っているだけ」というWebサイトもあり、ユーザー目線で作っているつもりでも、肝心の問題は表面化しないことが多いです。
ここからは、そのような事態を防ぐための「ユーザビリティの評価手法」について解説します。
ユーザビリティテスト(ユーザビリティ評価)
ユーザビリティテスト(ユーザビリティ評価)は、ユーザーにWebサイトやアプリを実際に利用してもらい、改善のヒントを得る手法です。
方法としては、実際のターゲットに近い属性のユーザーに対面形式やリモート形式でサービスを使用してもらい、その様子を観察します。
操作中のユーザーの行動や発言、表情などを分析することで、「ユーザーがどの場面で迷い、どの操作にストレスを感じているのか」を把握することが可能です。
ヒューリスティック評価
ヒューリスティック評価は、UX/UIの専門家が自身の経験則(ヒューリスティック)に基づき、Webサイトやアプリを定められた観点から評価する手法です。
あらかじめ設定した評価基準に沿ってチェックリストを作成し、項目ごとにスコアをつけていくことで、短期間でも効率的にユーザビリティ上の問題を洗い出せます。
このテストでは評価担当者と評価基準となるチェックリストを用意すればよく、ユーザーの協力も不要なため、コストを安く抑えられます。
また、Web制作やUX設計に精通した専門家が行うため、制作途中のWebサイトやアプリに対しても十分役立つヒントを得られるのもメリットです。
アクセス解析ツール
アクセス解析は、自社のWebサイトに訪れるユーザーの行動から
- ページビュー数のカウント
- 滞在時間・直帰率・離脱率の計測
- どのサイトから訪れたのか?
などのデータを収集・分析し、ユーザビリティを定量的に評価する手法です。
アクセス解析で得られたデータを基に導線設計やコンテンツ配置を見直すことで、ユーザビリティを継続的に改善できます。
例えば、特定のページだけ直帰率が高い場合は「ナビゲーションがわかりにくい」「情報がわかりづらい」といったユーザビリティ上の問題が潜んでいる可能性が。
反対に、滞在時間が長くコンバージョン率も高いページは、ユーザーがストレスなく目標を達成できている証拠といえます。
ヒートマップツール
ヒートマップツールは、Webサイトやアプリのユーザー行動を視覚的に評価するツールです。
Webページ上でユーザーが注視している場所や、よくクリックされている場所、どこで離脱しているのかなどを色分けして表示します。
この可視化データをもとに、
- 重要なコンテンツが見られていない
- 意図しない場所がクリックされている
といった問題点を客観的に評価することが可能です。
初心者でも理解しやすく、ユーザビリティの評価・改善の出発点として有効な手法といえます。
ユーザビリティを向上させる方法
ここからは、ユーザビリティを向上させる方法について解説します。
ナビゲーションや入力フォームの改善を行い、ユーザーが利用しやすいサイト(アプリ)を目指しましょう。
ナビゲーションの改善
ユーザーがサイト内で「次はどうすればよいか」と迷ってしまうと、離脱の原因になります。
そこで重要なのが、ナビゲーションの改善です。
- インジケーターの配置
- パンくずリストの設置
- サイト内検索の改善(カテゴリやタグの活用)
などを行うことでユーザビリティが向上し、ユーザーが目的のページにたどり着きやすくなります。
サイト全体の導線を整理し、ユーザーの行動を自然にコンバージョンへと導けるナビゲーション設計を心がけましょう。
コンテンツの最適化
ターゲットとするユーザーのニーズに見合った、適切な量の情報を提供することも重要です。
多すぎる情報や必要以上の選択肢を提示することは、ユーザーに余計なコンテンツを見せることになり、ユーザーの意思決定を阻害して満足度を下げてしまいます。
コンテンツを整理・構造化し、それぞれのページに必要にして十分な量のコンテンツを掲載することは、SEO対策としても有効です。
見出しや段落・箇条書きなどを効果的に使用し、ユーザーが情報を探しやすく読みやすいコンテンツを作成しましょう。
フォームの改善
入力フォームの項目が多すぎると、ユーザーは途中で入力を止めて離脱してしまう恐れがあります。
フォームの入力項目を必要最小限にし、できるだけシンプルかつ使いやすいデザインや項目数にすることで離脱率を下げることができるので、入力しやすいフォームになるよう工夫しましょう。
入力フォームまでたどり着いたユーザーをスムーズにコンバージョンに導くためにも、入力フォームの最適化を行い、ユーザビリティを高めることが重要です。
まとめ
ポイントまとめ
・ユーザビリティとは、ユーザーにとって使い方が分かりやすく簡単に使えることを指す
・ユーザビリティが向上することは、ユーザーの満足度やブランドイメージ、コンバージョン率の向上に結びつく
・ユーザビリティとUX・UI・アクセシビリティは、対象や捉える視点が異なっている
・ユーザーが本当に使いやすいかをチェックするため、様々な評価方法がある
・ユーザーが求める情報にアクセスしやすくするため、ユーザビリティの向上は必須
ユーザビリティを向上させることは、Webサイトやアプリの成功に必要不可欠です。
定期的にユーザビリティテストを実施し、ユーザーからのフィードバックを参考にして改善を続けることで、より使いやすいWebサイトやアプリを目指しましょう。






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