デジタル化が進む現代社会では、ホームページやECサイト、アプリなど様々な形態で提供されるWebサービスが増えました。
そこで重要になるのが、Webサイトやアプリの成功を左右する「ユーザビリティ」です。
この記事では、ユーザビリティの定義や重要性、評価方法、改善策についてわかりやすく解説します。
ユーザビリティの定義
ユーザビリティとは「ユーザーにとっての使いやすさ」を意味する言葉です。
Webサービスやソフトウェアにおいては「使い方がわかりやすく、誰にでも簡単に使うことができる」という意味合いで用いられ、製品やシステム等におけるユーザーの満足度を表します。
ISO(国際標準化機構)9241-11の定義
ISO(国際標準化機構)9241-11の定義では、以下の3つの要素が定義されています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 有効性 | ユーザーが目的を正確に達成できるか |
| 効率性 | ユーザーが目的を達成するためにかかる労力の少なさ |
| 満足度 | 製品・サービスに対するユーザーの快適さ |
ヤコブ・ニールセンによる定義
アメリカの工学博士ヤコブ・ニールセンが1993年に提唱した「ユーザビリティの5つの品質要素」は、以下の通りです。
これは、Webサイトやアプリなどの使いやすさを評価するための実務的な指標として活用されています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 学習用異性 | 初めて訪れたユーザーが、システムやサイトを簡単に利用できるか |
| 効率性 | ユーザーがどれだけ効率よく目標を達成できるか |
| 記憶容易性 | 長期間使用していなかったユーザーが、再度利用する際に操作を思い出しやすいか |
| エラー発生率・回避性 | ユーザーがどれだけミスを起こしにくいか。 またミスが発生した場合に簡単に回復できるか |
| 満足度 | 使用体験に対するユーザーの満足感や快適さ |
JIS Z 8521:2020(日本産業企画)の定義
ISOを一部調節したJIS Z 8521:2020(日本産業企画)では、以下のように定義されています。
特定のユーザが特定の利用状況においてシステム、製品又はサービスを利用する際に、効果、効率及び満足を伴って特定の目標を達成する度合い。
ユーザビリティはなぜ重要なのか?
ユーザビリティが重要なのは、ユーザーにとっての「使いやすさ」だけでなく、Webサイトの成果に直結する要素だからです。
例えば、デザインが見やすく操作がしやすいサイトの場合、ユーザーは欲しい情報をスムーズに得られるため、満足度が高まります。
結果として、
- コンバージョン率の向上
- リピート率の向上
- ブランドイメージの向上
といった成果につながりやすいです。
一方、ボタンの位置がわかりにくかったり、ページの読み込みが遅かったりすると、ユーザーはストレスを感じて離脱してしまいます。
どんなに内容が良くても、使いづらいサイトでは成果を出すのは難しいでしょう。
だからこそ、ユーザビリティを意識して「快適に使えるサイト」を作ることが重要なのです。
ユーザビリティとUX・UI・アクセシビリティの違い
ユーザビリティとUX・UI・アクセシビリティは混同されやすいですが、それぞれ意味が異なります。
各々の意味とユーザビリティとの違いを把握しておきましょう。
ユーザビリティとUXの違い
UX(ユーザーエクスペリエンス)は、ユーザーが製品やサービスを通じて得る「体験」を指す言葉です。
製品・サービスが使いやすいかどうかだけでなく、
- 使っていて楽しい
- 心地よい
- また使いたい
と感じられるかどうかといった、ユーザーの感情面を含めた印象を意味します。
混同されがちなユーザビリティ(使いやすさ)は、UXを構成する要素の1つです。
ユーザビリティはUXを支える土台であり、UXはその体験全体を評価する広い概念だと捉えるとよいでしょう。
ユーザビリティとUIの違い
UI(ユーザーインターフェース)は、製品・サービスとユーザとの接点を意味する言葉です。
例えば、Webサイトのレイアウトやボタンのデザイン、フォントサイズや文字色などがUIにあたります。
対して、ユーザビリティは「Webサイトの使い勝手はどうか?」(ボタンが押しやすいか・フォントの大きさはちょうどいいか)という視点です。
UIはWebサイトの構成要素であり、ユーザビリティはその使い勝手のよさを測る基準と理解するとわかりやすいでしょう。
ユーザビリティとアクセシビリティの違い
ユーザビリティとよく比較されるのがアクセシビリティですが、対象とする範囲が異なります。
アクセシビリティは「アクセスのしやすさ」を意味し、障がいの有無や利用環境にかかわらず、誰もがWebサイトやアプリを利用できる状態を表します。
- ユーザビリティは「特定のユーザーにとっての使いやすさ」を追求すること
- アクセシビリティは「より多くの人に利用してもらうこと(利用できない人を減らすこと)」
が目的です。
ユーザー層が限定されるサービスならユーザビリティを、幅広いユーザーが対象となるサービスならアクセシビリティを意識した設計が重要です。
ユーザビリティの評価方法
ユーザビリティを向上させるためには、製品・サービスのターゲットを明確にして設計した上で、
- 本当にそれが使いやすいのか
- 対象とするユーザーが望む目的を達成できるのか
を評価(検証)する必要があります。
しかし、制作サイドが単に作りたいものを作っているだけというWebサイトも多く、ユーザー目線で作っているつもりでも、肝心の問題は表面化しないことがあります。
ここからは、そのような事態を防ぐための「ユーザビリティの評価手法」について解説します。
ユーザビリティテスト(ユーザビリティ評価)
ユーザビリティテスト(ユーザビリティ評価)は、ユーザーにWebサイトやアプリを実際に利用してもらい、改善のヒントを得る手法です。
方法としては、実際のターゲットに近い属性のユーザーに対面形式やリモート形式でサービスを使用してもらい、その様子を観察します。
操作中のユーザーの行動や発言、表情などを分析することで、「ユーザーがどの場面で迷い、どの操作にストレスを感じているのか」を把握することが可能です。
テストを通じてユーザーが使いにくいと感じた点を改善したり、製品・サービスに対する要望を反映することで、ユーザビリティを高められます。
ヒューリスティック評価
ヒューリスティック評価は、UX/UIの専門家が自身の経験則(ヒューリスティック)に基づき、Webサイトやアプリを定められた観点から評価する手法です。
あらかじめ設定した評価基準に沿ってチェックリストを作成し、項目ごとにスコアをつけていくことで、短期間でも効率的にユーザビリティ上の問題を洗い出せます。
評価担当者と評価基準となるチェックリストを用意すればよく、ユーザーの協力も不要なため、コストを比較的安く抑えられるのがメリットです。
また、ヒューリスティック評価はWeb制作やUX設計に精通した専門家が行うため、制作途中のWebサイトやアプリに対しても十分役立つヒントを得られます。
アクセス解析ツール
アクセス解析は、自社のWebサイトに訪れるユーザーの行動から
- ページビュー数のカウント
- 滞在時間・直帰率・離脱率の計測
- どのサイトから訪れたのか?
などのデータを収集・分析し、ユーザビリティを定量的に評価する手法です。
例えば、あるページだけ直帰率が高い場合は
- ナビゲーションがわかりにくい
- 情報が探しづらい
といったユーザビリティ上の問題が潜んでいる可能性があります。
反対に、滞在時間が長くコンバージョン率も高いページは、ユーザーがストレスなく目標を達成できている証拠といえます。
アクセス解析で得られたデータを基に導線設計やコンテンツ配置を見直すことで、ユーザビリティを継続的に改善できるでしょう。
ヒートマップツール
ヒートマップツールは、Webサイトやアプリのユーザー行動を視覚的に評価するツールです。
Webページ上でユーザーが注視している場所や、よくクリックされている場所、どこで離脱しているのかなどを色分けして表示します。
この可視化データをもとに、
- 重要なコンテンツが見られていない
- 意図しない場所がクリックされている
といった問題点を客観的に評価することが可能です。
初心者でも理解しやすく、ユーザビリティの評価・改善の出発点として有効な手法といえます。
ユーザビリティを向上させる方法
ユーザビリティテスト(評価)を通じてユーザーが直感的に欲しい情報にアクセスできるようになることは、自社の製品やサービスの魅力をユーザーにしっかり伝えるために欠かせません。
ユーザーの関心やニーズ、疑問点などを適切に汲み取れているのかを確認する意味でも、ユーザビリティ評価を行ってユーザビリティを向上させることは必要不可欠です。
ここからは、ユーザビリティを向上させる方法について解説します。
ナビゲーションの改善
ユーザーがサイト内で「次はどうすればよいか」と迷ってしまうと、離脱の原因になります。
そこで重要なのが、ナビゲーションの改善です。
- インジケーターの配置
- パンくずリストの設置
- サイト内検索の改善(カテゴリやタグの活用)
などを行うことでユーザビリティが向上し、ユーザーが目的のページにたどり着きやすくなります。
サイト全体の導線を整理し、ユーザーの行動を自然にコンバージョンへと導けるナビゲーション設計を心がけましょう。
コンテンツの最適化
ターゲットとするユーザーのニーズに見合った、適切な量の情報を提供することも重要です。
多すぎる情報や必要以上の選択肢を提示することは、ユーザーに余計なコンテンツを見せることになり、ユーザーの意思決定を阻害して満足度を下げてしまいます。
コンテンツを整理・構造化し、それぞれのページに必要にして十分な量のコンテンツを掲載することは、SEO対策としても有効です。
見出しや段落・箇条書きなどを効果的に使用し、ユーザーが情報を探しやすく読みやすいコンテンツを作成しましょう。
フォームの改善
入力フォームの項目が多すぎると、ユーザーは途中で入力を止めて離脱してしまう恐れがあります。
フォームの入力項目を必要最小限にし、できるだけシンプルかつ使いやすいデザインや項目数にすることで離脱率を下げることができるので、入力しやすいフォームになるよう工夫しましょう。
入力フォームまでたどり着いたユーザーをスムーズにコンバージョンに導くためにも、入力フォームの最適化を行い、ユーザビリティを高めることが重要です。
まとめ
ポイントまとめ
・ユーザビリティとは、ユーザーにとって使い方が分かりやすく簡単に使えることを指す
・ユーザビリティが向上することは、ユーザーの満足度やブランドイメージ、コンバージョン率の向上に結びつく
・ユーザビリティとUX・UI・アクセシビリティは、対象や捉える視点が異なっている
・ユーザーが本当に使いやすいかをチェックするため、様々な評価方法がある
・ユーザーが求める情報にアクセスしやすくするため、ユーザビリティの向上は必須
ユーザビリティを向上させることは、Webサイトやアプリの成功に必要不可欠です。
定期的にユーザビリティテストを実施し、ユーザーからのフィードバックを参考にして改善を続けることで、より使いやすいWebサイトやアプリを目指しましょう。





