近年、ノーコード開発が注目を集めています。
ノーコード開発は専門知識がなくても、アプリやWebサイトを開発できる手軽さが魅力ですが、決して万能ではなくデメリットや限界もあります。
この記事ではノーコード開発のメリットとデメリット、並びに導入したものの失敗してしまった例も解説します。
ノーコード開発のメリット
開発コストの削減
ノーコード開発の大きなメリットは、開発コストを大幅に削減できることです。
従来の開発手法では、プログラマーなど専門家の人件費が大きな負担となっていました。
しかし、ノーコード開発ではプログラミングの知識がなくても開発できるので、人件費の大幅な削減が可能です。
さらに、開発後のメンテナンスや改善もツール上で簡単に行えるため、運用コストの削減にも繋がります。
開発期間の短縮
ノーコード開発は従来の開発手法と比較して、圧倒的に短い期間でシステムを開発できるというメリットがあります。
コーディング作業が不要なため、開発者はシステムの設計や要件定義・UI/UXデザインといった、より創造的な作業に集中できます。
また、ドラッグ＆ドロップやビジュアルインターフェースで直感的にシステムを構築できるため、修正も容易です。
誰でも開発に参加できる
ノーコード開発の大きな魅力は、プログラミングの専門知識を持たない人でもシステム開発に参加できることです。
従来の開発ではプログラマーやエンジニアといった専門家が開発の中心でしたが、ノーコード開発ではビジネス部門の担当者やデザイナー・マーケターなど、様々なスキルを持つメンバーが開発に参加できるようになります。
例えば、
- ビジネス部門の担当者はシステムの要件定義やテストにおいて、自らが携わる業務プロセスの知識を活用することができる
- デザイナーはUI/UXデザインの専門知識を活かし、使いやすく魅力的なインターフェースの設計に貢献する機会が得られる
このように多様な視点を取り入れて、使用するユーザーのニーズに合ったシステムを開発することが可能です。
ノーコード開発のデメリット
自由度の制限
ノーコード開発は多くのメリットがある一方で、自由度の制限というデメリットもあります。
なぜなら、ノーコード開発ツールはあらかじめ用意された機能やテンプレートに基づいてシステムを構築するため、複雑なロジックの実装や高度なカスタマイズを行うことは難しいからのです。
よって、システムの将来的な拡張性や柔軟性も考慮し、ローコード開発や従来のプログラミングによる開発も選択肢に入れておきましょう。
プラットフォームへの依存
ノーコード開発ツールを利用する上での注意点としては、プラットフォームへの依存が挙げられます。
ノーコード開発ツールは特定のプラットフォーム上で動作するため、そのプラットフォームの仕様変更やサービスが終了した場合、これまで開発したシステムが利用できなくなってしまいます。
そのため、もし利用しているノーコードツールが突然サービスを終了した場合、せっかく開発したシステムを別のプラットフォームに移行しなければなりません。
このような事態を避けるためには、以下に挙げる対策が必要です。
- プラットフォームの信頼性や実績・サポート体制などを十分に確認しておくこと
- データのバックアップやエクスポート機能を活用し、万一の事態に備えておくこと
プラットフォームへの依存は、ノーコード開発ツールを利用する上で避けられないリスクですが、事前に対策すれば影響を最小限に抑えられます。
大規模開発には不向き
ノーコード開発ツールは比較的小規模なシステムや、特定の業務に特化したアプリケーションの開発に適していますが、逆に大規模なシステム開発には向いていません。
その理由としては、
- 大規模なシステム開発では複数の開発者が連携して開発を行うため、バージョン管理やテストといった、開発プロセスを管理するためのツールや仕組みがどうしても必要になる
- 複雑なシステムや多くの機能を持つアプリケーションをノーコードツールで開発しようとすると、パフォーマンスの低下やメンテナンス性の悪化といった問題が生じるおそれがある
そのため、大規模なシステム開発を行う場合は従来のプログラミングによる開発、もしくはローコード開発ツールを検討する必要があります。
ノーコードツール導入の失敗例
① 開発途中でツールの限界が明らかになり、結局やり直しに
ノーコードツールは直感的に使える反面、複雑な業務ロジックや大量データの処理には不向きです。
顧客管理アプリをノーコードで作成した企業では、顧客数が増えるにつれてアプリの動作が重くなり、条件分岐やレポート出力などの処理過程においてツールの限界が判明します。
結果的にスクラッチ開発を選択せざるを得なくなり、初期投資と時間が無駄になってしまいました。
②担当者が退職したら、誰も管理できなくなった
ノーコードツールは一人だけでも素早く作れますが、属人化のリスクも伴います。
ある企業では、営業部のスタッフがSTUDIOでポータルサイトを構築しました。
しかし、その担当者が退職した後は操作方法を理解できる社員がいなくなり、結局更新もできないまま放置されてしまいました。
ナレッジ共有や運用体制の整備を怠ると、せっかく構築したツールが無駄になってしまいます。
③セキュリティ要件を満たせず、社内で使用禁止に
人事部門がノーコードをアンケートツールとして活用しようとした事例では、データ保存場所や暗号化方式が社内のセキュリティ基準を満たしていなかったため、情報システム部から「使用はNG」との判断が下されました。
特に、外部サービスと連携する場合や個人情報を扱う場合は、事前のセキュリティ確認が必須です。
④ツールの仕様変更で、業務が突然停止した
ノーコードプラットフォームは、アップデートや仕様変更が頻繁に行われます。
ある企業では業務自動化フローをノーコードツールで構築していましたが、ツール側の仕様変更で一部のステップが動作せず、業務に支障が生じました。
ノーコードに頼りすぎると外部ツール依存のリスクに気づかず、思わぬトラブルが発生するおそれがあります。
⑤社内でツールが乱立し、管理が煩雑に
複数の部署が独自にノーコードツールを導入した結果、同じような目的のツールが乱立して、どれが正式なものか分からない状態になった企業もあります。
アクセス権やデータの一元管理ができていないと、ノーコードツールが情報の分断やセキュリティリスクの原因になってしまいます。
まとめ
ポイントまとめ
【ノーコードツールのメリット】
・誰でも開発に参加可能：プログラミングの知識がなくても、これまでシステム開発とは関係なかった多様なメンバーが開発に関与できるようになる
・開発コストの削減：専門的なプログラミングスキルが不要なため、開発者の人件費や運用コストを下げることができる
・開発期間の短縮：ドラッグ＆ドロップ操作などの直感的なインターフェースにより、開発スピードが大幅に向上する
【ノーコードツールのデメリット】
・自由度の制限：あらかじめ用意されたテンプレートや機能に依存するため、複雑なロジックや高度なカスタマイズは難しい
・プラットフォームへの依存：特定のツールに依存するため、ノーコードツールの仕様変更やサービスの終了がシステムに影響を及ぼすおそれがある
・大規模開発には不向き：システムが大規模化すると、パフォーマンスの低下やメンテナンス面での問題が発生する可能性がある
ノーコードツールはアイデアを素早く形にする上で強力な武器となりますが、その反面、失敗に陥る例も少なくありません。
よって、手軽だからとノーコードツールを拙速に導入する前に、その目的などのポイントをしっかりと確認した上で、適切かつ冷静な判断と社内体制の整備が不可欠です。
この文章を参考に、ノーコードツールを働き方改革やビジネスの成長を支えるツールとして上手に活用して下さい。
