もし、思いついた言葉だけで理想の画像が手に入るとしたら?
そんな“魔法”を実現してくれるのが、いま話題の 画像生成AI です。
本記事では、画像生成AIの仕組みをやさしく解説し、直ぐに試せる無料ツールをその特色や使い勝手を交えて紹介します。
更に、画像生成AIを利用する際に注意すべき点を挙げています。
ことばを工夫して画像を創る面白さは、体験しないと理解できないでしょう。
あなたも、必ずやその魅力にハマります。
初めての方でも安心してチャレンジできる内容なので、ぜひ気軽に読み進めてください。
目次
画像生成AIの仕組み
「プロンプト」は指示書
画像生成AIは、ユーザーが入力した文書を元に画像を生成します。この文書のことを「プロンプト」と呼びます。
例えるなら、プロンプトは料理のレシピにあたります。
尚、画像生成AIプロンプトは英語を標準としているものが大多数です。
日本語でも画像生成は不可能ではありませんが、特に日本固有の名詞や形容詞が思うように反映できない場合があります。
その中で、OpenAIのDALL·E 3は、ChatGPTと連携し、日本人にはあまり知られていない言葉でも画像生成に反映できます。
「キーワード」が材料
プロンプトには「キーワード」を入れて、意図する画像を生成させます。
キーワードは料理の材料に相当しますが、料理には優れた材料も重要ですね。
キーワードの要素としては、以下のようなものがあります。
- 主題(被写体): 何を描くか(例:猫、城)
- 特徴: 主題の具体的な要素(例:ふわふわ、幻想的、帽子を被る)
- スタイル: 画風や表現方法(例:アニメ風、油絵風、写真のよう)
- 構図・視点: アングルやカメラワーク(例:接写, 上半身, 広角)
- 照明・色彩: 光や色合い(例:柔らかな光、日光、鮮やか)
- 解像度: 画像の鮮明度を上げるキーワード(例:HD, 8K, ultra detailed)
- 縦横比:画像の縦と横の比率(例:1:1, 16:9, 3:2, 4:3, 9:16, 2:3, 3:4)
AIはインターネット上の膨大な画像データから学習した情報をもとに、プロンプトやキーワードに合った画像を新しく作り出します。
プロンプトとキーワードの効果
プロンプトとキーワードの効果を簡単な例で説明しましょう。
例えば「海辺でスイカを食べる猫」と入力すると、勝手にAIが画像を描きます。(画像A)

ちょっと不自然ですね。
そこで「海辺で両手でスイカを食べる猫」と入力すると(画像B)になりました。
このように、言葉を足すだけで不自然さが無くなります。

更に、「夕暮れの海辺でサングラスをかけた猫が両手でスイカを食べている」では(画像C)になりました。

このように、どんどん細かいイメージを伝えられます。
プロンプトは、AIに渡す “魔法の呪文”、企業ならば ”プロジェクト指示書” と言ったところでしょう。
プロンプトを「上手に書けるかな?」と心配する必要はありません。
最初は短いプロンプトでも大丈夫。慣れてきたら少しずつ工夫して、自分だけの世界を作っていく楽しみ方を見出してください。
画像生成AIの主要な技術モデルの仕組みと変遷
2014年の画像生成AIの黎明期から現在に至る技術の推移に少しだけ触れておきます。
GAN(2014年) → VAE(2015年) → 拡散モデル(2020年) → Transformer(2021年) → ハイブリッド(2022年)、と毎年のように新たな技術が生まれています。
年代/技術モデル | 概要 | 代表例 |
---|---|---|
2014年〜 GAN系 | 生成器(Generator)が絵を作り識別器(Discriminator)が本物/偽物を評価。AIはこれを繰り返し、リアルな画像生成方法をを学習する。 | DCGAN StyleGAN / StyleGAN2 / StyleGAN3 |
2015年〜 VAE系 | 潜在空間に圧縮された膨大な数の圧縮画像と文書のセットを、圧縮前の状態に戻すための作業を繰り返し学習する。 AIは、学習で得た成功パターンに基づき、プロンプトで与えられた新規画像を作る。 | Beta-VAE VQ-VAE |
2020年〜 拡散モデル系 | ノイズで埋め尽くされた画像を元に戻す学習を繰り返し行い、その学習からノイズの無い画像を獲得する手順を確立する。 現在、主流を成す技術。 細部まで美しく、高品質な画像を生成できる点が強み。 | DDPM Stable Diffusion Imagen(Google) DALL·E 3(OpenAI) Midjourney Canva |
2021年〜 トランスフォーマー系 | 文章生成で成功したTransformerを画像生成に応用した技術。 文書理解と画像生成を強力に結びつけられるのが特徴。 | ViT-VQGAN Imagen Video Make-A-Video |
2022年〜 ハイブリッド系 | 「拡散モデル+VAE」、「トランスフォーマー+拡散モデル」など既存の技術の強みを活かして組み合わせることにより、より高品質・多機能化を実現する。 | Latent Diffusion Model ControlNet |
無料で試せる画像生成AIのおすすめツール3選
直ぐに試したいあなたのために、「無料プラン」もある、おすすめの画像生成AIツールを3つピックアップしました。
これらは全て、現在主流を占める「拡散モデル系」技術をベースとしています。
無料プランでは、1日や1ヶ月あたりの生成回数に制限がありますが、期間を過ぎるとリセットされます。
Stable Diffusion Online

パソコンににインストールしてローカル環境で使用する方法と、オンラインサービスを利用する方法があります。
オープンソース技術なのでパソコンへのインストールは無償、ローカル環境での画像生成数は制限なく利用できるのが魅力です。
但し、プロンプトは英語を基本としているので注意が必要です。
オンラインサービスの中には日本語に対応しているサービスもありますが、読解力は貧弱なのでプロンプトは英語入力をお勧めします。
Canva

▲引用元:Canva
デザインツールとして有名なCanvaにも、画像生成AI機能が搭載されています。
Canvaを使い慣れた方ならば、馴染のインターフェイスで画像生成もできるため簡単に扱えるでしょう。
生成される画像はライティング(照明)効果が秀逸で、例えば猫の毛の一本一本の陰影による立体感をリアルに表現します。
日本語を使用したプロンプトでは、日本固有の単語を理解できない場合において近似的な表現になってしまう場合があります。
OpenAI/DALL·E 3

▲引用元:OpenAI/DALL·E 3
GPT-4から実装された画像生成機能は、2025年夏にリリースされたGPT-5でも踏襲されています。
ChatGPTと連動しているため、プロンプトの日本語を理解する力には目を見張るものがあります。
しかし、無料プランでは1度に1画像しか生成できず、生成に要する時間も比較的長いという点は残念です。
実験:画像生成AIを使って検証
上記3種類の画像生成AIを用いて、「座布団の上で昼寝をしている子猫。猫の毛は白と茶の縞模様。座布団の模様は唐草模様。」というプロンプトを入力して生成した結果です。
Stable Diffusion Online

残念ながら、猫は眠っていません。目が覚めたばかりのように見えます。
プロンプトの「昼寝」「唐草模様」や「座布団」が理解されていないのが残念。
布や毛並みの手触り感はしっかりと伝わってきます。
Canva

気持ちよさそうに眠っていますが、座布団ではなくクッションのように見えます。
模様も唐草とは少し違うような気がしますね。
絶妙なライティング(照明)による立体感が素晴らしい。
猫の体毛一本一本やクッション生地の質感が際立っています。
OpenAI/DALL·E 3

これぞ「日本の座布団猫!」と言いたくなるような猫と唐草模様の座布団です。
しかも、プロンプトには入れていない「畳」が敷いてあります。「座布団」というキーワードからGPTは「日本家屋→畳敷き」を連想したようです。
追加で「麗らかな秋の日の縁側で青海波模様の座布団の上の三毛猫」とプロンプトに加えると、下の画像になりました。
「青海波(せいがいは)」という日本の伝統的な模様や「縁側」「三毛猫」を完璧に理解しています。

実験結果のまとめ
結果を表に整理してみました。(Stable Difusionはオンライン版を使用)
各ツールとも、長所、短所があります。
様々な画像生成に試用して特色を把握した後に、用途に応じて使い分けるのも良いでしょう。
Stable Diffusion OL | Canva AI | OpenAI/DALL·E 3 | ||
画像生成の制限(無料プラン) | 10回/日 | 50回/月 | 4回/日 | |
画像品質 | 解像度、画像サイズに制限あり生成が不得意な分野あり | 高画質ライティング効果が秀逸 | 高画質 | |
生成所要時間 | 数十秒 | 数秒 | 数十秒〜数分(無料プランの場合) | |
同時生成画像数 | 2 | 4 | 1(無料プラン) | |
日本語の理解度 | 全般 | △日本語の使用もできるが理解度は低く日本特有の名詞の理解は困難 | ◯ほぼ理解する日本特有の単語には不安な面も | ◎理解するキーワードから推考する力もあり |
子猫 | ◎完全に理解 | ◎完全に理解 | ◎完全に理解 | |
昼寝 | △横だが眠っていないものもある | ◎完全に理解 | ◎完全に理解 | |
座布団 | ✕理解できない | △クッションに近い | ◎完全に理解 | |
唐草模様 | ✕理解できない | △近いが完全ではない | ◎完全に理解 | |
青海波模様 | ✕理解できない | ✕理解できない | ◎完全に理解 | |
縁側 | △洋風のベランダ | △洋風のベランダ | ◎完全に理解 | |
画像著作権 | 商用か否かで細かな制限あり、要確認 | 基本的に利用者に帰属すろが、商用利用時の素材や肖像権には注意を要する | 同左 |
注意点:肖像権・著作権・商用利用
創作物には著作権があります。また個人の顔や容姿は肖像権を有します。
AIによる画像生成に限らず、他人の創造物を無断で複製したり、個人の顔・容姿をSNSやブログで公開することは、権利の侵害として訴訟のリスクを負うことになります。
更に、画像生成AIを商用利用する場合には、各ツールが定める利用規約を十分に理解する必要があります。
「商用利用」とは、直接に利益を得る行為に限らず、宣伝、販売促進のための掲示や配布に加えて、社内用資料として使用する場合も含まれるので注意が必要です。
思わぬ訴訟を受けるリスクを排除するためにも、疑問点があれば供給元に確認しましょう。
まとめ
ポイントまとめ
・2014年に産声を上げた画像生成AI技術は、約10年で第5世代技術まで急速に発展してきた
・プロンプトやキーワードを工夫することで、理想とする生成画像を瞬時に手に入れることができる
・生成される画像にはツールによる特徴があるので、目的や趣向により使い分けると良い
・日本における発展には、LLM(大規模言語モデル)の開発と連携による和魂洋才の高度なアプローチが求められる
・画像の生成には、著作権、肖像権、商用利用規約の十分な理解が必要
画像生成AIは、誰もが自分の想像をすぐに形にできる新しい表現の道具です。
難しい知識がなくても、簡単な言葉を入力するだけで世界にひとつだけの画像が生まれます。
今回ご紹介した3つのツールは何れも無料で始められ、初心者でも気軽に試せます。
まずは一度、短いプロンプトを入力してみてください。想像以上に「AIってすごい!」と感じるはずです。